コロナウィルス感染症と刑事裁判

佐賀県内でも新型コロナウイルス感染症が拡大し、私たちは生命や身体の危険にさらされています。
他方で、緊急事態宣言にともなう外出制限や休業要請は自営業者を始め、多くの人々の生活を圧迫しています。

今回は、私たちの生活全般を大きく変えたコロナウィルス感染症が、刑事裁判にも影響を及ぼしている
という話を紹介させてください。

今般、佐賀県弁護士会の会長からコロナウィルス感染症と刑事裁判に関する2つの声明が出されました。

      4月20日  刑事裁判の期日延期等に関する会長声明
      4月23日  刑事収容施設における適切な感染症防止策を求める会長声明

4月16日に全道府県に緊急事態宣言の発令が拡大されてから現在に至るまで、
全国の刑事裁判の期日が一部の例外を除き一律に取り消されています。
この中には身体拘束中の被告人で執行猶予判決が見込まれているようなものも含まれています。

4月20日の会長声明は感染症防止策を十分に検討した上で公判期日をできる限り実施することなどを求めています。

広い法廷で刑事裁判を実施することで、どの程度感染の危険があるのでしょうか?
傍聴席が傍聴人で一杯になるような事件は佐賀ではほとんどありません。
それでも、一律に刑事裁判の期日を取り消すようなことが本当に必要なのか、疑問を感じます。

警察の留置場や拘置所(佐賀では佐賀少年刑務所)の状況も深刻です。
例えば警察の留置場は窓が少なく換気すら困難です。狭い房には複数名入れられることも珍しくありません。
いわゆる「3密」の状態が恒常的に生じています。症状が疑われてもPCR検査を簡単には受けられないという報告もあります。
軽微な犯罪の容疑で、生命の危険にさらされてまで留置されるようなことが本当に正当化されるのでしょうか?

4月23日の会長声明は刑事収容施設内での感染症防止策を講じることを求めるとともに、可能な限り在宅捜査に
切り替えることなどを内容としています。

コロナウィルス感染症は刑事裁判で被疑者・被告人となったいわば少数者の人権にも大きな影響を与えているのです。

(弁護士 出口)




Posted by すず風 at 11:07